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皮膚科ブログ記事|大田区大森の大木皮膚科

ジェネリック医薬品のデメリットとは?なぜ勧める?安い理由を詳しく解説

ジェネリック医薬品とは?

 ジェネリック医薬品(=後発医薬品)とは、新薬を開発・製造する大手製薬メーカーの先発品特許が切れたあとに、「同じ有効成分をもつ同等の原薬」を使って後発品メーカーによって製造された医薬品のことを云います。過去には、先発医薬品の特許が切れてから、「後からゾロゾロ」出てくるので、通称ゾロ品などと呼ばれることもありました。

 2000年代初めに、厚生労働省より通知があり正式に「後発医薬品」と呼ばれるようになり、「国がアメリカ並みに後発医薬品の割合を増やす目的」で認可基準をそれ以前より厳しくしました。海外では医薬品をメーカーのつけた独自の製品名ではなく、「一般名処方」(generic name prescription)で処方箋を出すという意味から、「ジェネリック医薬品」(generic drug)と呼ばれるようになりました。

※ここで注意すべき点は、厚生労働省はジェネリックについて「先発品と同等」という表現を使うことです。決して「まったく同一・同じ」ではなく「同等=ほぼ同じようなもの・同じ程度のもの」という意味となります。どのように同等であるかは、以下に解説していきます。

薬局や健保組合はジェネリック医薬品をなぜ勧めるのか?

保険組合からのハガキが来る訳は?

 2018年には国民総医療費は年間43兆円を超え、さらに今後長期高齢化社会が進行するにつれて医療費の伸びが国の財政や会社員が加入している「各健康保険組合」の財政を逼迫させているという現状があります。そのうち、薬剤費は約10兆円といわれていますが、少しでも医療費全体の額を減らすため、ジェネリック医薬品の普及を国を挙げて推奨しているという事情があるのです。

 「ジェネリック医薬品の薬価」は、大手製薬メーカーが開発・承認を得た先発品よりも安く設定されており、アメリカなど海外では「先発品の3割程度」という非常に安価な値段となっています。一方、諸外国の使用率(アメリカ90%以上、ドイツ80%以上、イギリス70%以上)などに比べると平成26年の時点で日本は48%とまたまだ低くなっていました。そこで、国は令和2年9月頃までに「ジェネリック医薬品の使用率」を80%以上に引き上げようと各種施策を行ってきました。

令和2年9月には78.3%で、目標達成時期が延期となった

 さらに健康保険組合は、組合員の健康保険料で運営されていますが、「近年、高齢者医療制度への拠出金等」が増額されてきたために、どこの保険組合も赤字の状態となっています。組合員の保険料率をあげていくのにも限界があるため、「ジェネリック医薬品の使用」を促すことで健康保険組合の負担軽減・財政改善を行おうとしているのです。

 健康保険組合では、組合員が医療機関・薬局で調剤されたお薬をチェックして、「ジェネリック医薬品に切り替えることにより一定額以上負担金が軽減される方」をピックアップして定期的にお知らせという形で「ジェネリック医薬品への切替をお願いするハガキ」を送っている訳です。

 

薬局が積極的にジェネリックへの変更を勧める訳は?

 最近、調剤薬局へ処方箋を持っていくと、

  • 調剤薬局で薬剤師さんから、「ジェネリック医薬品にしませんか?」と声を掛けられるのが当たり前に
  • 同じ成分でジェネリックの方が安くなるので使ってみませんか?
  • やたら薬局でうるさくジェネリックを勧められることも・・・
  • 強引にジェネリックに変更する薬局もある?

などと、云う事はないでしょうか?

 医療技術の高度化に伴い、脊髄性筋萎縮症治療薬(1億6000万円越え)、白血病治療薬(3300万円越え)といった超高額薬剤の保険適用等が進み、「医療資源の平等な再分配をどうするか?」という問題も残すものの、近年医療保険費をはじめとする社会保障費の増加に年々拍車が掛かり、国の財政負担が大きくなってきています。

 そこで、国は年1.3兆円の医療費削減効果があるとされる「ジェネリック医薬品の普及」を進めていく政策誘導として、調剤薬局へ対してジェネリックの利用率が低い場合に「調剤報酬の減額」というペナルティーを課しています。つまり、「調剤薬局が今まで通りの保険収入を維持する」ためには、一定割合以上のジェネリック医薬品の処方箋枚数を達成する必要があるのです。

 一方で実際に患者さんが薬局に行く場合には、「大手の調剤薬局では上層部の方針」によって採用している後発医薬品の種類が決まってしまうため、より良いジェネリック医薬品を調剤してもらうには「まず薬局選び」というのが現状となっています。原則としてはジェネリック医薬品への変更は「強制ではなく、最終的には患者さん個人の選択・意思」となりますが、後発医薬品のメリット・デメリットなどの情報をきちんと説明せずに、「やみくもに熱心に勧めてくる薬局チェーン」は避けたほうが安全といえるでしょう。

生活保護など一部公費負担の方では、必ず後発医薬品が処方されることになっています。

 とくに長期にわたって投薬が必要な、「高血圧・糖尿病・高脂血症」などの慢性疾患では「ジェネリック医薬品へ変更した場合の自己負担額」が大きく減額となります。一方、薬剤によっては後発医薬品では十分な効果がでない場合もありえるため、まずは該当する薬剤をジェネリックに変更しても問題ないかを担当医師に相談してみると良いでしょう。

★国の主張としては、国民皆保険制度を昭和30年代に達成して以来、現在の急速な高齢社会で医療保険財政が逼迫する中、必要な医療資源を確保しつつ持続可能なシステムを構築していく必要があるとしています。国全体のためには、薬剤費の削減は必須かつ急務の課題です。
参考》ジェネリック医薬品への 疑問に答えます - 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/iryou/kouhatu-iyaku/dl/02_120713.pdf

※注意)以上までが一般的なジェネリック医薬品のお話となります。以下からは、かなり詳細な内容となりますのでご興味ある方はお読みください。

医師がジェネリック医薬品をいやがる理由

 長年、クリニックで開業医を行っていると「ジェネリック医薬品に変更した場合に効果がなかった!」とクレームを受けることが何度かあります。また、過去には医療専門雑誌などで内科系のジェネリック医薬品だと「半分程度しか効果がなかった」ので先発品に戻したら元通りの効果があった、という記事もありました。

 ジェネリック医薬品導入の当初の時点で、医療費の削減という大義の元で、「国がジェネリックへの変更を優先」して製品の安全性・先発品との同等性についてのチェックが甘かったことは医師の共通認識とも云えます。

 

現在でも、ジェネリック医薬品に対して、

  • 医師の約6割が、後発医薬品に対して不信感を抱いている
  • 約7割の医師が、「先発品との効果・副作用の違いを経験した」
  • 後発品メーカーから医師への安全性のプロモーションが皆無である。
  • ジェネリックには一流もあれば三流もある(=ピンキリ
  • 先発品では経験したことのない副作用が見られた・・
  • 国がジェネリックの質と信頼性を高めることにもっと力を入れたら、こういった安かろう悪かろうの後発品がでなかった。

という医師からの意見・コメントがm3.comなどの医療系情報サイトにも散見されます。

 一方、病院に勤務する医師においては、過去10年以上に渡って国がジェネリック医薬品変更への政策誘導としてのDPC包括医療費支払い制度)を取り入れてきたため、病院自体で採用する薬剤をジェネリックに変更しないと病院収益が減るシステムとなってしまいました。すなわち、病院の採用医薬品がジェネリックが中心となってしまっているため、外来で処方する医薬品もジェネリックであることが当たり前になっている状態です。

 もちろん、病院で採用するジェネリック医薬品は、病院の責任者の方や病院薬剤師の方がよく吟味した上で採用しているはずですから、比較的安心できるのではないかな、、、と思われます。

 もちろん、後発医薬品メーカーでも社内の管理体制がしっかりと整い、「良質なジェネリック医薬品」を作っている製薬会社もあるでしょうから、一律にすべてのジェネリック医薬品が粗悪で疑問があるということではありません

 一方、アメリカにおいては、FDA(アメリカ食品医薬品局)が先発医薬品と後発医薬品の生物学的同等性の判定を行い、ジェネリック医薬品の品質保証をするための公的ガイドブックとしてオレンジブックが発行されています。日本に於いても、「医療用医薬品最新品質情報集(ブルーブック)」という同様の取り組みはあるものの、まだ全ての薬剤が網羅されているわけではなく「ジェネリック医薬品の品質確保」についての確かな情報がありません
https://www.fda.gov/drugs/drug-approvals-and-databases/approved-drug-products-therapeutic-equivalence-evaluations-orange-book

アメリカFDAのオレンジブック

 

クリニックにおけるジェネリック医薬品

 一般の開業医師にとって「ジェネリック医薬品」とは、

  1. 後発品メーカー営業担当者も来ることがなく、薬品の情報が入る事がない
  2. メーカーの数が多すぎてどのメーカーが良いのか情報がない
  3. 製造しているのは、誰も聞いたことがない会社ばかり。
  4. 医学情報誌などで先発品の方が明らかに安全な薬がある。
  5. 数は少ないが、一部で推奨されるジェネリック医薬品もある。

という認識となりますが、調剤薬局での「まったく同じ成分・効能ですよと云う説明」には少し違和感があります。

理由として、先発品との効果・副作用の違いを経験が多い

 実際、ジェネリック医薬品への変更を一律可能としてしまうと、患者さんが処方箋を持っていく薬局によってどのジェネリック医薬品がでるか管理が不可能となってしまいます。その場合に、「診断・治療薬の選択が合っていても」、後発医薬品に変更したことによって期待される治療効果がでないというリスクが生じてしまいます。

 国は「ジェネリック医薬品への変更に伴って生じるリスク・不都合」については、「担当医師・調剤した薬剤師」には責任はなく、問題が生じた場合は医薬品副作用被害救済制度で対応するとしています。ただし、医薬品副作用被害救済制度を利用するには、「医師の診断書などをはじめとした各種手続き」が必要で、かつ厚生労働省・薬事審議会の判定・承認を受けなければ適応となりませんのでお気をつけ下さい。

後発医薬品は個別の副作用が検討されていないので証明が困難

 当院の方針としては、初回に処方箋でもらうお薬は「なるべく先発品、もしくはクリニックから推奨出来るジェネリック医薬品」でお願いしております。もしも、治療が長引き長期間内服が必要な場合は担当医師までご相談いただけますと助かります。

 

コラム処方箋記載変更の経緯について

  • 元来、ジェネリックを含めてどのような処方を行うかは医師の裁量であった。
  • 国の方針により、メーカー品名で処方しても「ジェネリックに変更しても良い」というチェックが入れられるようになった。
  • 次に、特段記載のない場合は「ジェネリックに全て変更しても良い」ということにルールが変更された。
  • 同時に、安全性の面から「医師が処方箋欄に変更不可」とチェックを入れられるようになった。
  • 全てジェネリック品(一般名処方)を行った処方箋に対して、「処方箋料のインセンティブ」が付けられるようになった。

 ちなみに、一般名処方というのは、患者さんが処方箋を持っていった薬局において「どのようなジェネリック医薬品を出しても良いですよ」ということになります。現在、後発医薬品の管理体制が問題となっており、「手放しでどのジェネリックを使っても良いですよ(=一般名処方)」とは、医師の良心として受け入れがたいものと考えております。

★薬局でジェネリック医薬品は、「先発品とまったく同じ成分で、値段が安くなる」と説明されるのには違和感がある。

 

ジェネリック医薬品が安い理由

 一般的に、新薬を初めから開発していくのに要する費用は、一つの薬剤につき約300億円以上の莫大なコストが掛かるとされています。「研究開発費」、「臨床治験費用」が多額になる上に必ずしも実際に使えるお薬になるとも限りません。さらに、国から新薬として承認を受けるためには、26種類以上の厳しい基準をクリアする必要があります。先発医薬品の薬価には相当分の研究開発費用が含まれているとも云えるでしょう。

 一方、ジェネリック医薬品は、「先発品の物質特許の切れた成分でお薬を作る」ため、

  1. 研究開発費用・特許料が掛からないこと
  2. 製品化のための試験を大幅に省略することができること
  3. 原薬についても一から開発する必要がなく、安価な海外製(中国、韓国、インド製等)が使用可能であること
  4. 原薬の承認も初回にクリアしていれば良く臨床治験も不要なこと
  5. 人体に対するデータもジェネリック医薬品の健康人投与時での血中濃度が前後20%程度以内に治まっていれば許可となること。
  6. 先発品で有効性や安全性が確立しているので、情報提供等に関する販売管理費も掛からない

 などの理由によって、製造コストが大幅に抑えられて開発費も総額1億円以内に治まります。このように、開発にかかる期間・手間・コストが先発医薬品に比べて圧倒的に安いために、先発品よりも3~7割近くまで安く薬価が設定されています。

先発医薬品とジェネリック医薬品の比較

  先発医薬品 ジェネリック
開発コスト 300億円以上 1億円以内
承認基準 26種類以上の厳しい基準 原薬同等性+生物学的同等試験のみ
臨床試験 必要 不要
開発期間 10年以上 短時間
薬価 比較的高め
※国が定める
 先発品の30~50%
製造会社 主に大手製薬会社 中小の後発品会社が多い
原薬管理 海外製もある 主に中国、インド、韓国
製造工程 承認基準に従う 添加物などが異なる
副作用試験 あり なし
薬剤情報提供 あり なし

 ジェネリック医薬品は薬価は安いと云っても、初めから圧倒的に安い訳ではありません。先発品の物質特許が失効してから、はじめて作られる後発医薬品は「原則として先発メーカー品の7割の薬価」と決められていました。数年前までは、国内の後発品主要メーカーの売上げは年間20%以上も伸び、利益率も20%以上あったそうです。一般企業で10%以上の経常利益があると「かなり優秀な方」ですから、ジェネリック医薬品の使用促進という国策があったとしても「後発医薬品の薬価はかなり優遇されていた」と云わざるを得ません。

 現在、後発医薬品メーカーは、国内に190社以上あると云われており、「この不景気にあって成長産業かつ儲けが多くでる後発医薬品製造」に如何に多くの企業は参入してきたかを物語っています。つい先日まで、テレビでも「大物俳優さんを起用したジェネリック医薬品のTVCM」が多く流されていたことを皆さんも覚えているのではないでしょうか?

大物俳優さんを起用したCM

 一方、定期的に国によって見直される「薬価=国の定めたお薬の価格」は、市場価格の実勢調査をおこない2年毎の診療報酬の改訂で徐々に引き下げられてきています。先発品の値段(薬価)も徐々に引き下げられていますが、「一部のジェネリック医薬品」においては最近では海外並みとなり「先発品の3割程度の価格」にまで引き下げられてきました。後発医薬品メーカーが多数あるといっても多くの薬剤を作っている「大手のジェネリック医薬品メーカー」は数社のみであり、残りは小規模の企業が大多数となります。

★ジェネリック医薬品は、先発品(メーカー品)と「同等の効果がある」とされる上に、価格が安価であり「患者さんの自己負担額」・「増え続ける国民総医療費」を抑制するという利点がありますが、その品質については多くの小規模企業の参入も多く、管理体制がすべてしっかりしている訳とは限らない

先発品とジェネリック医薬品の違いは?

まずは、国や後発品メーカー団体の主張を見ていきましょう

 ジェネリック医薬品は、先発品と同等以上の原薬を使い、効果や安全性に対しても厳しい基準の検査を行っています。従って、薬価が安くても「品質が劣るということはなく」、同等の効き目があり副作用・相互作用も先発メーカー品と同じです。また、認可された範囲で添加剤を工夫・変更することが可能であり、先発医薬品と全く「同じ」である必要はないだけでなく、飲みやすさや味などをより良く改善されている場合もあります。

 日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)によると、ジェネリック医薬品の原薬の品質・製造法についても、事前の承認申請の際に医薬品医療機器総合機構(PMDA)にて厳しいチェックが行われるとのことです。なお、承認された後の医薬品の原薬品質確保は、「各ジェネリック医薬品メーカー」が行うことになっています。

  1. ジェネリック医薬品の承認申請には、原薬品質の先発医薬品と同等性審査が行われます。
  2. 原薬の純度は、医薬品調和規制国際会議(ICH)の合意に基づき「原薬の不純物に関するガイドライン」が、ジェネリック医薬品にもそのまま適用されます。
  3. 製造施設は、日本国で定めた「医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理に関する基準」(GMP省令)に適合した国内・国外の施設で製造・管理されます。
  4. 原薬を製造している国内・国外の原薬製造施設に対し、PMDAにより直接製造施設での調査・査察が行われ、GMP遵守状況が確認されます。
  5. 原薬製造が海外の場合でも、先発品同等品質のジェネリック医薬品が承認、流通する制度が機能しているとしています。

※出典;日本ジェネリック製薬協会(GE薬協)より

承認された医薬品の原薬品質確保は、各製造メーカーが行う。

 かつては、「薬価が安いジェネリック医薬品は、海外製の粗悪な原薬を使っている」と心配されていた時期もありましたが、現在は上記のようなチェックシステムがあり、先発品同等以上の品質の原薬が使われています、とされています。なお、医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページを確認すると、「GMP適合性調査は実地調査が基本であるが、製品のリスク・該当国のGMP基準・提出された調査資料によるGMP遵守状況等をPMDAが判断し、書面による調査が行われることもある」、とされております。

 つまり、実際には書面のみで審査で通ってしまう場合もあり、必ずしも「中国、インド、韓国などに多くある海外医薬品製造所」に対してのPDMAによる実地検査が全施設で行われている訳ではないということになります。

★PMDAによるGMP遵守状況の確認は、毎年全施設に行われてる訳ではなく、書面による調査に関する報告も遅れがちとなっています。

※参考;機構のGMP適合性調査からの問題点について
https://www.pmda.go.jp/files/000212974.pdf

先発品と後発医薬品で違う点は?

添加物が異なることでの弊害

 主成分となる原薬が同等であれば、実際の製剤にするときの「添加物」は、日本薬局方の規定に沿っていれば認められています。しかしながら、添加物の配合に関する先発品の「ノウハウ」がすべて公開されているわけではありませんので、実際は「消化管内での吸収速度」、外用剤や貼布剤では「経皮吸収速度の安定性」などに差が出てしまうこともあります。最近では、添加物の違いによってアレルギー反応で出たという報告がジェネリック医薬品普及に合わせるようにして増加しているようです。

薬剤の有効性の問題 

 ジェネリック医薬品の製造承認については、あくまで「①承認時の原薬の品質」と「②少人数に対する血行動態のチェックのみ」であり、「製造された製品の長期安定性試験」、「包装の耐久性試験」などが省略されています。血行動態のチェックについては、10-20名程度の少人数の健常人試験のみであり、かつ「血中濃度は薬剤吸収の個人差による違いがある」という理由で前後20%程(合計45%)の血中濃度のズレがあっても後発医薬品として認可されています。血中濃度コントロールがシビアな内科系の薬剤等については問題を起こす可能性が残ってしまうため、専門領域の医師に各々の患者さんが確認する必要があります。

※日本小児神経学会の声明

後発医薬品メーカーの管理体制

 さきに記載したとおり、ジェネリック医薬品が毎年公的な機関によって、原薬・製品の基準が「定期的に実地で確認」されているわけではありません。実際は、各後発医薬品メーカーの「原薬調達先の対するチェック体制」、「原薬の安全性、純度に関する社内検査体制」、「原薬調達先の安定性・国内内製化」などは、各会社の自己管理に任されている状態となってしまっています。

管理体制の不備が多く指摘され、自己回収が頻発している

 

ジェネリック医薬品のデメリット・副作用は?

 ジェネリック医薬品のメリットには、①安い薬価=自己負担軽減効果があり、②「健康保険組合の負担や国民総医療費」の軽減に寄与することの2つが考えられます。一方、医薬品である以上「実際に内服して体内に取り込まれる」・「薬剤の種類によっては長期間継続する必要がある」ために最大限の安全性が求められます。

厚生労働省は安全性に問題なしと云い切っている

※参考)厚生労働省;ジェネリック医薬品の使用促進について
https://www.mhlw.go.jp/seisaku/2012/03/01.html

ジェネリック医薬品のデメリットとして考え得ることは?

  1. 主要ジェネリック医薬品メーカーでは、ひとつの会社で500種類以上の後発医薬品を製造している場合もあり、品質管理はそれぞれの会社任せになってしまっている。
  2. どのジェネリックメーカーが品質のよい薬を作っているか、医師・患者さんに対してほとんど情報がまわってこない
  3. 患者さんにとって「一般名処方は難解な呼び方」であり、また「後発医薬品メーカー」も多数ありすぎて自分が何を飲んでいるのか把握しきれない
  4. そのため後発医薬品を処方した医師の判断、もしくは薬局でジェネリックに変更した薬剤師の判断を信じるしか判断材料がない。
  5. 海外からの原薬が使われることが多く、製造国の状況によって突然供給が止まるなど不安定になることもある。
  6. 年々、ジェネリック医薬品の薬価は下げられており、信頼のおける大手の後発医薬品製造会社以外では品質管理にまでコストが掛けられなくなっている
  7. 小さな後発医薬品メーカーが急に潰れたり、製造を止めてしまうと、突然に薬が手に入らなくなる
  8. 一般名処方での処方箋をもらってしまうと「調剤されるジェネリック医薬品の品質」が調剤薬局の判断・方針ですべて決まってしまう。。。

 などが考えられます。

 また、ジェネリック医薬品の直接のデメリットではありませんが、これ以上先発・後発医薬品も含めた薬価(=国が決めるお薬の値段)が引き下げられてしまうと、「古くからある良い安価なお薬が原価割れする」ことによって作るメーカーがなくなってしまうという問題もあります。さらに、後発医薬品割合がこれ以上増えてしまうと「新薬を開発する先発品メーカーの体力」を削いでしまい、日本国内の大手製薬メーカーが新薬を作る余力がなくなってしまい、日本が国際的な新薬開発競争に負けてしまうという課題も残します。

 

ジェネリック医薬品の副作用の扱いは?

 そもそも、ジェネリック医薬品「先発品と同等である前提で作られていて」個別の臨床試験を行っていない状態なので、副作用についても証明することが困難です。先発品と同等であるという理由から、個別に臨床的な効果や副作用について検討されていないからです。日本ジェネリック製薬協会(https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19351.html)によると、副作用とは医薬品との因果関係が否定されない「医薬品使用による有害反応」のことを指します。

JGAは「有害事象と副作用」は別であると説明している

 一方因果関係の有無を問わず「医薬品使用により生じた好ましくない反応」を有害事象と呼ぶとしています。元来、臨床的な効果や副作用が個別に検討されていないジェネリック医薬品では、「好ましくない有害事象」が発生したとしても「患者さん、もしくは担当した医師」は因果関係がある有害事象であることを証明することは困難です。余程、個別に重篤な問題(死亡する等)が生じない限りは、薬についての疑義が生じても、だれも確かめようがないのです。

 

東京都保険医協会が作成した「ジェネリック(後発医薬品)は医者に相談して」

 東京都の保険医の有志団体である「東京都保険医協会」から以下のようなポスターが出されています。このポスターについては以前、新聞などに取り上げられ「ジェネリック医薬品に対する患者の正しい理解を助けない」、「一部医師の意識改革の遅れによる誤解」であると批判をされました。医療費削減を最優先とするか、国民が受ける医療の安全性を優先するかの議論で、未だに課題として解決されていない問題です。

※参照)http://www.hokeni.org/top/download/pdf/2012generic_a4.pdf 

ジェネリック医薬品の原薬調達先は?

 ジェネリック医薬品のうち、海外から原薬および原材料を輸入されるものは品目ベースで6割程度であり、その内訳をみていくと、①中国36.8%、②インド16.7%、③韓国11.7%となっており、上位3つ国の「中国、インド、韓国」で60%以上を占めているのが現状です。最近では、各後発医薬品のホームページに原薬調達先情報も公開されて載っていることが多く、ご自分で調べて見ても良いでしょう。

純粋な国内製造の原薬は30%程度とされる

 これらの海外製の原薬に対しては医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、国外の原薬製造施設に対しPMDAにより直接製造施設での調査・査察が定期的に行われるとしています。しかし実際のところは、ジェネリック原薬は「インド・中国・韓国」が多いのに実地調査実績は少ないのが現状です。

インド、中国、韓国等の海外製造施設が、日本のGMP省令適合しているか実地調査・査察を毎年受け入れているとは、考えがたい。

 

ジェネリック医薬品の自主回収と事故

 日医工の抗菌薬・セファゾリンの中国での原薬欠品をきっかけに表面化した原薬の安定性供給・品質に関する問題など、ジェネリック医薬品に対する信頼性が現在も揺らいでいます。医薬品の自主回収率先発品に比べて、後発医薬品が圧倒的に多くなってしまっているのが現状です。後発医薬品の原薬においても、異物混入問題などがしばしば起きており、ジェネリック医薬品へ疑念をさらに助長してしまっています。

 2020年末、ジェネリック医薬品メーカーの小林化工(福井県)が製造販売した爪白鮮やカンジダ等に使われる抗真菌内服薬「イトラコナゾール錠50mg『MEEK』」に、調製工程において追加で原薬投入した際に誤って睡眠導入薬が混入されるという事件がありました。イトラコナゾールは、皮膚科である当院でも「爪白鮮や爪カンジダ症」にしばしば処方されるお薬でありますが、元々原薬物質特許のみでなく、製造課程にも特殊な技術がいる薬剤のため当院では先発品である「イトリゾール錠50mg」を患者さんに対して推奨しておりました。

 その後、小林化工では製造している多くの製薬国からの承認書と違う方法での製造実態が見つかり、GMP基準の管理がなされていない非正規の製造記録も残されていました。抗真菌内服薬「イトラコナゾール錠50mg『MEEK』」での健康被害245人に上り車の運転中に事故を起こした方が38人、うち死亡した方が2人となってしまいました。2021年2月に、同社には福井県から116日に及ぶ業務停止命令が下されています。

 

 2021年3月には、業界最大手である日医工(富山県)は、品質管理で不適合となったものを「適合品となるよう内部処理」販売承認書と異なる方法で行い出荷したことが認められました。同様の不正行為は10年以上前から行われていましたが、同県および医薬品医療機器総合機構(PDMA)の立入り検査にて発覚しました。近年、同様の不正が明るみになり、行政処分を受ける後発医薬品メーカーが後を絶ちません。

 日医工が公表した外部資料によると、「ジェネリック医薬品の需要急増による製造品目の増加に、人員や設備が追いついておらず逼迫したノルマに追われていた結果」として、不正が横行してしまっていたそうです。後発医薬品の使用促進策が国を挙げて行われ、当初は「開発費も掛からない高利益の後発品」を作ってきたジェネリック医薬品メーカーでしたが、医療報酬改定のごとに年々薬価が引き下げられ「急増する需要」・「取り扱い品目の増加」に対して後発医薬品メーカーの管理体制が追いついていません。さらに「後発医薬品の低利益・過当競争」が起きている現状の中で如何に「品質管理の確保」・「安定供給」をどのように行っていくかが今後の課題となってきています。

 

★本来、先発医薬品とジェネリックでチェック体制の厳しさは変わらないはずですが、ジェネリックでは、品質管理にお金をかけられない、監査システムが十分ではないなどの問題があることは否定できないと思います。

薬局にとってのジェネリック医薬品とは?

 現在は、調剤薬局においては「国の政策誘導の方針」によってある程度のジェネリック医薬品の処方箋枚数(50%)を確保しないと「調剤報酬の減額」というペナルティがあります。また、ジェネリックを含む処方箋枚数が「75・80・85%」を越えてくるとインセンティブ(調剤料に対する報奨金)がプラスでつく調剤報酬制度となっています。先発品・後発医薬品であるかに係わらず「薬価差益はほぼ無い」のが現状であり、「薬局で収益を上げていくため」にはジェネリック医薬品の処方箋枚数を増やすことが売上げに直結してくる仕組みとなっております。

 一方で、近隣の薬局長さん(東京都大田区大森)にお話しをお伺いすると、「きちんとジェネリック医薬品のメリット・デメリット」についてきちんと説明して調剤していると「やっと65%に届くかどうか・・」というのが現状だそうです。考え得る「薬局に於ける後発医薬品の問題点」は以下の通りです。

  1. 患者さんへの説明丁寧に行っていくには説明の時間がなかなか足りない
  2. ジェネリック医薬品ひとつの先発品につき10-20種類ある場合もあり、すべて種類の在庫を置くことができない
  3. 従って、ジェネリック医薬品の特定のメーカーを指定する患者さんへ対応が現状として困難となります。
  4. 常に先発品と後発医薬品を置くため、在庫管理の負担が2倍となり大きくなってしまっている。
  5. ジェネリック医薬品メーカーによって欠品になることがたびたびある(≒供給が不安定)。
  6. 元々、先発品も安価な薬剤だと患者さんの自己負担減にならないこともある。
  7. ジェネリックが品質管理がしっかりしており安定性などが担保されたものであれば、ジェネリックに変えていくことも患者さんのために良いとも思っている。
  8. すべての後発医薬品メーカーの管理体制がしっかりしている訳ではないのが現状とも考えている。

 最近、国がジェネリック医薬品の欠品を出した後発品メーカー「薬価収載を見送る=売ることが出来ない」というペナルティーを発表しました。

 近年、後発医薬品の自主回収が増えてきていますが、国が全国の後発品メーカーを順次査察にまわっているためだと考えられます。どちらの理由にせよ、「近年のジェネリック医薬品の信頼性低下」に歯止めをかけたい厚生労働省が打ち出した政策ですが、国が後発医薬品は「原薬管理・製造管理に問題がある」と正式に認めた形になってしまっています。

★どのジェネリック医薬品メーカーだと安心・安全なのかの情報は患者さんにはほとんど無いのが現状であることが問題です。薬局でも今後は、「ジェネリック医薬品は先発品と同じ効能・安全性を持つ安価なお薬です」とは説明出来なくなる!?

信頼おけるジェネリック会社はどこなのか?

一度承認されたあとは、安全性などの信頼基準は、各ジェネリック会社の管理体制に依存している

 厚生労働省によると、現在国内のジェネリック医薬品会社は、約190社余りとなっておりますが、500種類以上の品目を扱う大手メーカーは上位3社くらいとなっています。一方、残りの8割のメーカーが、50製品以下の製造を手掛ける小規模の企業が乱立している状態となってしまっています。

 したがって、経営体力のない小規模の製薬会社は、ジェネリック医薬品の薬価が年々と引下げられている現状で、製品の管理体制まできちんと行うには資金不足に陥ってしまっていることも否めません。しかしながら実際に治療をうける身からすると医薬品である限り、健康に関わる問題に直結することなので大企業・中小企業など関係なく品質管理には充分な体勢で医薬品製造を行っているものと何となく期待してしまいますね。だって、国が安全と言い切っているのだから・・、薬局に行っても薬剤師さんが先発品と同等以上のお薬で薬価が安いだけというから・・・

 このような状況で製薬業界の内部事情が分からない患者さん、およびジェネリック医薬品メーカーから直接情報提供の受けることのない医師達は、一体どのように「本当に信頼のおけるジェネリック医薬品メーカーがどこであるのか」を判断したら良いのでしょうか?・・・大手の後発医薬品メーカーであれば「きちんと管理をしているだろう」という期待は、「業界第1位であった日医工の管理体制の不備の露呈」によって、あっさり裏切られた状態です。近隣の薬局長さんからのお話では、「残りの大手2社の製品くらいしか信頼できないのでは・・・」というお話もあります。

製薬管理体制に信頼がおける会社一覧をランキングしてみました

 ジェネリック医薬品の医療事故の原因は、直接的な個人のヒューマンエラーのみでなく①製薬企業としての経営方針・倫理的な問題②原薬管理を中心とする各製薬会社の管理体制がしっかりできていなかったこと、に起因するものとも考えられます。以下は、当方の独断となってしまいますが、

  • 当院でよく処方される外用剤、内服剤のジェネリック医薬品会社ピックアップ
  • 各メーカーのホームページを確認し、「企業の経営理念がしっかり記載してあるか」「原薬の管理体制についての記載があるか」の2点につきチェック
  • 企業の経営方針をみる手段として「日本ジェネリック製薬協会への加入の有無」について

を調べてみました。

 もちろん、皮膚科に関連する後発医薬品会社限定となってしまいますが、「ご自分に処方されたジェネリック医薬品がどの製薬会社によって作られた製品であるか?」、また「該当するジェネリック医薬品メーカーがどのくらい信頼できるのか?」など、患者さん自身が善し悪しを判断する目安となれば幸いです。

 

まずは大手3社について

 ジェネリック医薬品メーカーの最大手3社は、「日医工、沢井製薬、東和薬品」でした。どの会社も年間売上高1500億円以上あり、4位以下の年間300億円前後に比べて圧倒的に取り扱い品目も多く経常利益等も増収増益となっていました。

  • 1位日医工1800億以上(日医工・SANIK)★〇 ⇒不正が発覚し営業停止処分
  • 2位沢井製薬1800億 (サワイ・SW)★◎
  • 3位東和薬品1500億 (トーワ)★◎

日医工だけ目指すところが違ったのか…

 これらの上位3社は、国内小規模製薬メーカーの買収・合弁や海外進出などによってジェネリック医薬品がシェアを伸ばすにつれ年々売上げを伸ばしてきました。それぞれの会社がどのくらい信頼に値するかの判断基準として、製薬メーカー名と伴に、①かっこ内は、一般薬品名の後に付く略号(屋号)、②★付きは、日本ジェネリック製薬協会加入有(全38社)、③ホームページの企業理念・原薬管理記載状況(◎優良、〇有、無印はなし;著者判断による)を追加情報として記載しました。やはり大手2社の「沢井製薬・東和薬品」の会社のホームページ情報がしっかりしており、企業理念・原薬管理についての記述がきちんとされていて、信頼おけるメーカーとして推薦できるかと思います。

※参考として会社名に、「各製薬メーカーのHP」へのリンクを張っておきます。
屋号とは、ジェネリック医薬品の処方名についている製薬会社を識別する略号のことです。
※注)先=先発品も製造しているメーカー 

 

4位以下の大手製薬会社は?

HPのキャッチフレーズから製薬メーカーの方針が分かる

  YD、NP、JGなどはよく見ることがあると思われますが、どこの会社が作っているか分かっている患者さんはどのくらい居るのでしょうか?「漢字・カタカナ」であれば、読み方よりどこの製薬メーカーであるか類推が可能か、と思いますが、アルファベットを使った屋号(会社の略号)は患者さんにとって分かりにくいのでは、と考えます。

明治は何に挑んで、何を守れたのか?

ここで注目すべき点は、

  1. 元々、先発品を作っていたメーカー「ジェネリック医薬品製造」に参入している。
  2. 大手の名前が書いてあるが、製造を外部に委託してあるブランドも出てきている。

ことでしょう。

 少しでも売上げになれば、大手もジェネリック医薬品競争に参戦しますし、分が悪いとみれば「製造を外部委託」してしまうということです。安い値段で、外部の会社が製造してくれれば「儲けが確保」しやすくなります。気になるのは、先発品の大手メーカーが後発医薬品の屋号にメーカー名を入れないことです。明治⇒MEEK、第一三共⇒DSEP、武田⇒TYK,テバとなっており、大手メーカーがジェネリック医薬品を作っているというと、「イメージに傷がつく」からでしょうか?

 

売上高100億以下のその他の中小製薬会社

大手子会社および下請けメーカーは、まっとうな経営方針が多い

同じ会社販売形態によって2つ以上の略号(屋号)を持つ場合があります。また、略号で1文字違いだと一般の方には判別困難です。
製造した製薬会社と販売会社が異なることがあるので注意。
※順不同・以上で73社となりその他の中小製薬会社が100社以上あることになります。

 製薬会社と略号(屋号)一覧ジェネリック薬品の団体からは公表されておらず、上記は電子カルテの添付文書参照画面よりの引用となります。一方、全体の一覧表ではないですが「おくすり110番」というお薬検索サイトから、「ジェネリック医薬品名」で屋号+薬価+メーカー名を「各医薬品毎」に調べることができるようです。

ヤフーなどの優秀サイトコンテストでも常に上位

http://www.jah.ne.jp/~kako/

 ※お薬110番は、医薬情報の提供・共有の目的で、NPO団体である医薬品情報研究会「ファーマフレンド」により運営・数人の薬剤師有志により情報が更新されているようです。

 

企業理念・原薬管理について記載

 多くの後発医薬品会社では、2017年頃より原薬製造国および製造元の情報を公開するようになってきました。「後発医薬品を含む処方箋の割合80%の国の目標」が達成されようとする直前での後発医薬品に対する事故・管理体制不備による不信感を少しでも払拭するために、最大手の日医工、沢井、東和においても自社ホームページ上に原薬製造国の一覧表が公開されています。

 たとえば、大手ジェネリック医薬品メーカーの沢井薬品のホームページをみると、

  1. 原薬の調達複数の国・製薬メーカーから行う購買の複数化・安定化
  2. 原薬メーカーに対するGMP基準遵守・安定供給能力の定期的な調査・確認を徹底
  3. 自社グループ会社による原薬の内製化国内製造
  4. 複数工場・グループ企業での生産体制により1つの製造ラインが止まってもバックアップが可能とする
  5. 国内での自社の販売体制を構築

などを行い、ジェネリック医薬品の安定供給、品質確保を行っていくとしています。

 令和3年現在、国は順次「無通告の抜き打ち監査を進めており「ジェネリック医薬品の自主回収が相次いで」おります。そのため、日本全国の薬局でジェネリック医薬品の供給不足が起きてしまっています。

★190社以上の後発医薬品メーカーが乱立する中、「屋号・略号」からどの製薬会社が作っているのかの判別が一般の方には困難であり、かつ原薬の品質・管理体制の信頼できるのは「日医工を除いた残りの最大手2社」くらいしかなさそうです。

オーソライズドジェネリック(AG)とは?

「先発医薬品とまったく同一」というAGの安全性

 ジェネリック医薬品は、「先発品の有効成分の物質特許が切れた後」に、「同じ有効成分」を用いて作られたものとなりますが、さらに最近では、より安心・安全性の高いオーソライズド・ジェネリック(AG・エージー)と呼ばれるタイプの後発医薬品も登場してきました。オーソライズド・ジェネリック(AG;Authorized Generic)とは、Authorized=「認可された」+Generic drug=「ジェネリック医薬品」という意味で、先発品メーカーより許諾を得て「有効成分、製造方法・技術、添加物・製造ライン」などがすべて同じ条件で作られたお薬です。

 AGを製造する製薬会社は、「先発品メーカーの子会社・関連会社」や「委託を受けて先発品会社より認定された外部製薬会社」となりますので、物質特許の切れた原薬のみが同等である「一般的なジェネリック医薬品」よりかなり安心感が高いといえるでしょう。また、オーソライズド・ジェネリックは「先発品メーカーがまったく同じ製造ライン」で作られたものを、「薬名だけジェネリック医薬品」として販売する場合もあり、その場合には「先発品とまったく同一」の場合もあります。同じジェネリック医薬品であっても「オーソライズド・ジェネリック」であれば、薬を実際に使われる患者さんもかなり安心になるのではないでしょうか?

 一方、オーソライズド・ジェネリック(AG)にもいくつかの問題点があります。

  1. 調剤薬局で採用されるジェネリック医薬品は、通常は一つの先発品に対して一つのため必ずしもAGが選ばれない
  2. 調剤薬局でどのジェネリック医薬品を採用するかは、個人経営であれば経営者・大手のチェーンであれば本部が決めることになる。
  3. 患者さんの安心・安全のためにはAGが望ましいが、納入価格がより安いジェネリック医薬品の採用が優先される傾向にある。
  4. 従って、オーソライズド・ジェネリック(AG)の普及率は思ったほど高くなってきていない
  5. 先発品をずっと使っていた患者さんには、「現状維持バイアス」が働きAGであっても替えたくない気持ちが働く。
  6. AGは先発品と同一にも係わらず、オーソライズド・ジェネリックに替えたところ、効果がないと感じる方がいる(※ノセボ効果=逆プラセボ効果が働く)。
  7. 病院で、「一般名処方を行ってしまうと必ずしもAGが処方されないケース」がありえる。
  8. ジェネリック医薬品がいやな人は、AGでも嫌がることが多い。
  9. オーソライズド・ジェネリックは、先発品メーカーに特許料を支払うため後発品メーカーにとって利益が減ることになる。

などが考えられます。

 

同じジェネリック医薬品であっても、先発品と同一であるジェネリックならより安心に

 先発医薬品は、その売上げより「開発のための研究費・費用を回収する必要」があり、「一定期間(通常10年)の独占販売期間とある程度高い薬価」が認められています。一方、先発品の物質特許が切れてしまう「よく売れている先発医薬品」ほど、後発医薬品が10数社より一気に発売されて先発品の市場シェア割合が急速に減少し、ジェネリック医薬品に置き換わってしまうという現象がおきています。

先発品メーカーがオーソライズド・ジェネリックを出すメリットとしては、

  • 先発品の特許がある間に、関連会社・子会社などに「オーソライズド・ジェネリック」を販売させることができる
  • 他の後発品メーカーが参入するより前に、オーソライズド・ジェネリックを販売することによって後発品シェアの多くを獲得することができる。
  • 独占期間が終わってから一気に他社のジェネリック医薬品に市場が奪われることを防ぐことができる。
  • オーソライズド・ジェネリックは、先発品メーカー自身・関連子会社が作るため品質確保が徹底されやすく「安定供給」しやすい。
  • 処方する医師も先発品と同一であるAG「有効性・安全性の面からも」処方しやすくなる。
  • 患者さんにとっても、「先発品とそのまま同一の原薬・製法」で作られたAGは使いやすい。

 以上のように今後のオーソライズド・ジェネリックの普及が進んでいくこと「患者さん・処方を行う医師」にとっても望ましいことです。

オーソライズド・ジェネリックを積極的に市場投入したケース

 オーソライズド・ジェネリックとして非常に有名なお薬に、「フェキソフェナジン錠「SANIK」」があります。いわゆる先発品の「アレグラ錠のAG」となります。アレグラは元々サノフィ・アベンティス(sanofi-aventis)という先発品メーカーが作っていましたが、日医工がサノフィとの共同で「日医工サノフィ・アベンティス」という合弁会社を作りオーソライズド・ジェネリックとしたものです。「SANIK」は、サノフィ・アベンティス(sanofi-aventis)の頭文字SAと、日医工のローマ字表記(nitiikou=NIK)より屋号となりました。

 

★原薬・添加物・製法も先発品と同一で安全性の高いオーソライズド・ジェネリック(AG)の普及は、患者・医師の安心にとって望ましいが、日本では一般に未だ広まってきていない。

ジェネリックにする場合にはどうすればよいのでしょうか?

 ジェネリック医薬品を希望するときには「病院・クリニック」・「調剤薬局」での2つの対応をする必要があります。

◆病院・クリニックでは下記の処方パターン等が考えられます

  1. 総合病院ですと最初から病院採用となっているジェネリック医薬品を指定されて処方される。
  2. クリニックなどでも医院の方針として「一般名処方」となっている。
  3. クリニックなどで原則は先発品を処方する
  4. 院内処方のクリニック原則は先発品を処方される。

 上記の①②の場合ですと、何も患者さんから申告がない場合は、「ジェネリック医薬品」が処方されます。ただし、一部の薬剤で医師が先発品の方が望ましいと考える場合には先発品が指定されるかもしれません。③の場合ですと、受付時や医師の診察時に「ジェネリック医薬品を希望する旨」をはじめに申告しておかないと先発品が指定となってしまいます。④の場合には、院内に元々先発品しか在庫がないとジェネリック医薬品を処方してもらうという選択枝がありません。

患者さんがジェネリックを選択する政策誘導のひとつ

◆薬局においてはの対応は?

  1. 「一般名処方」もしくは「後発医薬品指定処方」の処方箋を医療機関から出された場合は原則的にジェネリック医薬品となります。
  2. 先発品の処方箋でも、「ジェネリック不可の✔マーク」がついていないときには、薬局でジェネリック医薬品が選択可能です。
  3. 先発品指定の処方箋であっても、ジェネリック医薬品を希望する場合には薬剤師さんと相談の上、医院まで疑義照会を入れてもらいジェネリックに変更が可能です。

 つまり、薬局において患者さんが希望すれば、ほとんどの場合は「ジェネリック医薬品」を調剤してもらうことは可能なのです。但し、後発医薬品を選んだ場合は、薬局によって置いてあるジェネリック医薬品メーカーは決まってしまっているため、「ジェネリック医薬品のメーカー」までは指定することは出来ません

ジェネリック医薬品の断り方・希望しない理由

 ここまで読んでいただいて、「やはり安心だから先発品」で処方して頂きたいと思う方もいるでしょう。ここでも「病院・クリニック」+「調剤薬局」での2カ所での対応が必要となります。何故、2回も申告作業がいるのか疑問に思う方もいるかもしれませんが、国が30年以上前から「医薬分業」といって「処方するのは病院・クリニック」であり、「薬を実際に出すのは調剤薬局」政策誘導としての役割分担を行ってきた結果です。医師の行った処方が「他の医院の薬と飲み合わせがないか?」など服薬指導の最終チェックを行うのが調剤薬局の主な役目となっています。

◆病院・クリニックでの処方等は?

  1. 病院で初めからジェネリック医薬品が指定で出される場合。
  2. クリニック一般名処方の処方箋が出される場合。
  3. クリニック先発品が主に出される場合
  4. 院内処方先発品が出される場合。

以上の4パターンが主として考えられるでしょう。

 

 注意すべきは、ジェネリック医薬品が指定されて「変更不可チェック」が入ってしまうと薬局に行ってからでは先発品を選択するのが困難なことです。病院によっては患者さんに確認することなしに、はじめからジェネリック医薬品が変更不可で処方されてしまう場合もあるようですので、診察時に担当医に先発品希望であることをしっかり伝えましょう

稀に先発品がない薬局があるので注意!!

◆薬局での対応はどうすれば良いの?

  1. たとえ、一般名処方であっても「患者さんが希望すれば先発品を調剤」してもらうことが可能です。
  2. 先発品処方で、変更不可マークがついていなくても先発品は選択可能です。
  3. 但し、ジェネリック医薬品が変更不可で処方されてしまうと先発品への変更はできなくなります。

 注意すべき点は、一般名処方で処方箋をもらってしまうと「薬剤師さんによっては先発品を選択できません」規則と違うことを言う方がいることです。処方箋に変更不可マークがついていないと強引にジェネリック医薬品を勧めてくる薬局もあると聞きます。先発品を希望することを伝えれば、特に理由を云う必要はありません

一般名処方箋では国からの指導で後発品を勧める努力義務があり、調剤記録には「なぜ先発品を選んだのか理由を記載」する必要があります。

 はじめから病院において、ジェネリック医薬品指定で変更不可が付けられた処方箋は、薬剤師さんの一存で「先発品へ戻すことは不可能」なので、余程強く先発品がほしいと言わないと変更することはできません。変更するためには薬局から病院の担当医へ連絡を取り先発品への変更する旨を疑義照会で確認する必要があり、当方自身の経験ですが一つの薬剤の変更で薬局にて40分以上の足止めとなったことがありました。

★特殊な場合を除き、最終的に薬局では「患者さんに先発品を選ぶ権利」は残っています。最終的に、「ジェネリック医薬品を選択すること」は患者さんの判断・自己責任になっていることに注意をしましょう。

良いジェネリックを選ぶには、まず薬局選び?

あるチェーン薬局ではジェネリック率85%を達成としていますが・・・

 ジェネリック医薬品普及は、「薬剤費抑制という国を挙げての目標」ではありますが、あくまで「後発医薬品への変更」が各々の患者さんにとって利益がある場合になされるべきです。そして、薬局ではクリニックの医師よりも直接的に製薬メーカーや薬卸業者との取引があるため情報は入りやすいと思います。薬局の運営者がジェネリック医薬品に関して、患者さん本位で考えて勉強熱心であって欲しいと切に願います。

 ジェネリック医薬品に関して薬局では、

  1. ジェネリック医薬品仕入れの値引きを考慮しつつも、
  2. 安定供給・品質に信頼がおける会社を選択し、
  3. 治療効果の点からは、はじめは先発品での調剤(もしくはオーソライズドジェネリック)をなるべく行い、
  4. 患者さんの治療効果が安定してから副作用の起こすことが少ない信頼のおける後発品へ変更していく。
  5. ジェネリック医薬品へ変更する場合には、採用しているメーカー名も含めて充分な情報提供がなされる
  6. さらに、後発医薬品に変更しても負担額に差がないものは無理にジェネリックにしない
  7. 最終的に患者さんが先発品を希望する場合には、無理な変更は行わない
  8. 後発品の使い勝手に不都合があれば次回調剤は先発品へ戻してくれる

という手順を行ってくれる薬局が理想でしょう。

信頼できる薬局のジェネリック医薬品の対応

 当院では、近隣薬局に対して上記の対応をお願いしております。そのような手順を踏んでいると、現状ではジェネリック率が決して85%以上とはならないのではないでしょうか?

 今後は、薬局ごとに情報開示の一つとして、「どのような方針でジェネリック医薬品の採用を決めているか?」、「主として採用しているジェネリック医薬品メーカー」等を公表しても良いのではないでしょうか?患者さんにとって不利益となるような後発品への変更とならないことを願っております。

 

★薬局ごとに、採用されているジェネリック医薬品メーカーは違ってきてしまうが、どれも全く同じ品質であるという保証はありません。

ジェネリック医薬品の今後は?

 国民総医療費が年々増えている現在、国民皆保険制度を維持するためにジェネリック医薬品の普及は必須な課題です。一方、後発医薬品メーカーの不祥事・自己回収が相次いでおり、「ジェネリック医薬品への信頼が大きく揺らいでしまっている」のが現状です。急速なジェネリック普及率の増加は、後発品メーカーの原薬管理・品質確保・安全性という根本的な部分に影を落とし、新薬・ワクチン等を開発する先発品メーカーの体力を削いで日本の国力全体の問題ともなってしまっています。

 原薬の品質検査も行ったから同等である、GMP基準に沿っての検査を行っているから品質は確保されているという「言い訳」は、まるで令和2年~3年に起きた「新型コロナ感染」に対する「感染対策していれば旅行では感染しない」、「オリンピックと感染増加には関連はない」と言い続けた日本政府の姿勢と重なって見えてしまうのは当方だけでしょうか?国民皆保険制度を維持するという大義名分の元で、様々な利権が絡んで「国民ひとりひとりの安全」という大切な部分が抜け落ちていたのかもしれません。

 

 今後は国民の健康・安全に関わるこの問題につき、国は全力でジェネリック医薬品の品質確保・原薬管理体制のチェック・情報公開に取り組む必要があります。また、「原薬の管理」・「製薬の品質・安定供給」をきちんと行える大手後発品メーカー率先して情報発信を続けていくことが望まれます。調剤薬局業界の課題として、各薬局がどのようなジェネリック医薬品を採用しているかにつき情報開示を進めることで、ひとりひとりの患者さんがより品質の確かなジェネリック医薬品を選べる時代に今後はなっていくことを期待します。

  • この記事を書いた人
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医師;大木更一郎

平成元年日本医科大学を卒業し、皮膚科学教室形成外科斑に入局。平成16年より先代院長と伴に皮膚診療を行う。平成27年大学退職後、医院を継承。(※日本医大形成外科兼任講師・形成外科専門医・救急専門医・熱傷専門医・日本皮膚科学会会員)

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