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皮膚科ブログ記事|大田区大森の大木皮膚科

とげ抜き・皮下異物|大田区大森の大木皮膚科・棘が抜けずに困ったら

トゲ抜き・埋まっているトゲの抜き方は?

とげ抜き(皮下異物)はどうしたらいいの?

 木のとげなどを誤って、手足に刺してしまうと痛くて困ってしまいますね。皮膚の表面に「トゲの先端」が見えていれば、とげ抜きピンセットなどで「そっと抜く」こともできるでしょう。たとえ、取れなくても表面からある程度みえている「小さな棘」であれば、皮膚のターンオーバーに伴って自然に排出するのを待つという方法もあります。

 一方で、皮膚科外来には「棘が刺さった部分が化膿」してしまい、困ってくる患者さんが大勢いらっしゃいます。少し深めにトゲが入ってしまい、皮下に至った場合には、異物が化膿して皮下膿瘍を作り、膿んでしまうので注意が必要です。ご自宅で抜けなかった「とげ抜き」は無理をしていじると余計に深く入ってしまうこともありますから、棘をさした部分に「違和感や痛み」が続く場合には早めに病院を受診しましょう。当院では、患部を拝見させていただき、「トゲ・異物除去」等の処置をさせていただいております。

 

ポイント

 とげ抜きには、少しのコツがあります。受傷部位は、手足などの露出部分が圧倒的に多いです。明るいライトの下で、皮膚の中に棘が透けてみえることが確認できれば、処置の準備を始めていきます。

 トゲを刺してすぐの場合には、皮膚科で除去できることが多いのですが、「皮膚の深くに入ってしまったもの・1か月前後経過した陳旧性のもの」では、総合病院の形成外科にご紹介されていただく場合がありますのでご了承のほどお願い申し上げます。

とげ抜き・皮下異物の原因・種類は?

 植物や栗の棘を刺した・木製家具を触って「ササクレ」が刺さった、などが一番多く外来で見られます。たまに、非常に大きな木片が刺さってくる方もいます。とげ抜きで来院される患者さんには、「木のトゲを刺した、石を踏んだ」など原因がはっきりとしている方もいますが、知らない間に「トゲが刺さって」しまい、受診時は原因が分からないこともあります。中には、トゲは見えないにも関わらず、痛いといって来院するケースもあります。

 トゲ・皮下異物の発症部位は、「露出部である手足」に多く、顔首や躯幹部での報告もあります。その8~9割は「比較的皮内の浅いトゲ」で、ほとんどのケースでは一般皮膚科外来で対応可能です。稀に皮下の深い部位や完全に皮膚の下に埋入してしまったケースでは外来処置では取れないこともあり、皮膚外科の専門である形成外科に紹介する必要が生じます。

 トゲ・皮下異物の原因となるものには、

  • 木のトゲ、木片、割りばし
  • 草などの植物のトゲ
  • 髪の毛(埋入毛)
  • ガラス片
  • 石などの鉱物
  • 手術瘢痕での縫合糸
  • さかなの骨
  • 鉛筆の芯
  • ウニのトゲ
  • 釣り針

などが挙げられます。

 ウッドデッキで擦れて5cmほどの大きな木片が手の平に刺さって来た方や、床屋さんのケースで指間部に多数の埋入毛が固まっていたケースなどもありました。変わったところだと“ウニ”の棘が多数刺さった、と云う方もご来院されます。

 

とげ抜き・皮下異物の検査は?

 トゲ抜き・皮下異物では、

  • どのような状況でトゲ等が刺さったのか?
  • 局部の視診、丁寧な触診
  • 指先、足先などのしびれの有無

 等の確認が大切です。

 なぜならば、トゲの刺入孔が小さくても「以外とトゲが深く刺さっているケース」があるからです。トゲが刺さった部位のみに着目してしまうと、皮膚奥に入ってしまった大きなトゲ・異物を見逃してしまうリスクに注意を払う必要があります。

 

ダーモスコピー検査

 皮下の浅いレベルのトゲ・異物ですと、皮膚科外来でよく用いられるダーモスコピーが有用です。角質を透化することにより皮膚の浅いレベルのトゲの観察が容易となります。トゲの刺入孔やトゲの大きさ、トゲの刺さっている向きなどの把握が可能です。

超音波検査・レントゲン等

 当院では行っておりませんが、さらに深いトゲでは「超音波エコー検査」が有用であるとの報告もあります。金属片や大きめのガラス片では、レントゲン撮影画像に写るので、おおよその位置の把握にX線が用いられます。とくに木片ではレントゲンではみえないために、MRIが必要になる場合もあります。

 金属片などが皮下深くに刺さっている場合には、局所麻酔・レントゲン透視下に摘除することも選択枝となります。割りばしなどの木片の異物は、レントゲン検査では写りませんので、大きな病院にてMRI検査が必要になることを覚えておきましょう。

 木片・木の枝などが深く刺さった場合や病歴から異物が深部に刺さっている可能性のある場合には、総合病院の形成外科にご紹介となることもありますのでご了承の程お願い申し上げます。

 

埋まっているとげ抜き方、取り方のコツ

◆当院でのとげの抜き方

 当院では、皮膚外科専門の院長が処置に当たっています。使う道具は以下のとおりです。

  • 処置用無影灯(明るいライト)
  • 角質を削るためのカミソリ
  • 処置用のルーペ(拡大鏡)
  • 注射用針(23G程度)
  • マイクロピンセットなど細いものを掴めるもの

 棘は非常に細いことも多く、明るい作業環境がなによりも大切です。まずは、手台の上に患部を乗せていただき、ライトを合わせます。消毒をした上で、おおよその大きさ・深さ・刺さっている向きなどを判断します。以下の作業は、処置用ルーペを使って行っていきます。肉眼で正確にとげをきれいに出すことは困難です。

 来院される方のほとんどが、「自宅で抜こうとして表面をいじってしまっているため」先端が皮膚の中に埋もれています。手足の皮膚には厚い角質層があり、異物の向きを考慮しつつ、異物の軸方向に対して「横向き」にカミソリで少しずつ表面を削っていくと徐々にトゲの先端(刺入孔)がみえるようになります。爪周りであれば、少しだけ爪を切る必要があるかもしれません。異物が皮下に及んでおり、化膿を伴っている場合には角質層を削ることによって「自然に排膿」されて、異物も一緒に排出されてくることもあります。

 ある程度、先がみえたあとに棘が皮膚に対して斜めに刺さっていれば、棘の方向、深さ等をダーモスコピーで再度確認した上で、23G(ゲージ;太さの種類)程度の注射針で表皮レベルを浅く切り開き、本体を出していきます。

 とげが深い方向に入っている場合は、先端が見える周りの皮膚をマイクロピンセットで軽く開いて、本体を掴みやすくします。①木や草などでは黒くなった異物が、②ガラスや金属ですと掴んだ段階で特有な硬い質感が分かります。

 以上の操作で、マイクロピンセットで先端が掴めるようになりますので、刺さっている方向の逆方向にそっと抜いていきます。さらに深い場合は外来での処置可能と判断した場合に限って、局所麻酔を追加して摘出するようにしています。

石のかけらが埋入した例

髪の毛が埋入した例

 

ウニの棘

 ウニの棘がささってしまい受診される患者さんがいました。現地の人に聞いた話では、ウニの棘をさしたときには、レモンなどのクエン酸を含んだもので患部を浸しておくとよいそうです。多数の棘がささっていたため、大きなものは当日抜きましたが、一度にすべて取り切れなかったため何度か通院していただきました。実際にレモン汁を毎日塗っていたそうです。何日後かに受診された際には、ウニの棘は大分フニャフニャになり容易に抜けるようになっていました。

釣り針の場合

 釣り針の抜き方は、通常のとげ抜きとは異なります。釣り針には獲物が掛かったときに「容易に針が抜けない」ように、針先に「返し」が付いています。通常はそのまま抜くことはできませんので、釣り針を貫通させるようにして先から抜くか、返し部分が引っかからないように針の弯曲外側に力を掛けながら抜くとうまく抜ける場合があります。

コラム

拡大鏡について

 当院の院長は、生来の近眼の状態では、裸眼での丁度焦点距離が20cm程度となっております。簡易の拡大鏡(1.7倍)程度を使うと視野もよく、3倍マイクロルーペを使うよりも患部がはっきりと明るく見えるメリットがあると考えております。

マイクロピンセットとは?

 皮膚外科で直径1mm以下の細い血管や神経を縫合するときに使用する微細な細いピンセットで、細い棘、糸、針なども正確につかむことができます。

トゲが深い場合には要注意!

咽頭・眼窩のトゲでは命に関わることも

  頭部・顔面には奥に「脳組織・神経」などがあり、割りばしなどの「木片」を深く指してしまうと「命に関わる場合」もあります。とくに、刺入部が小さいと「どのような状況で刺さった」のか、患者さんの自己申告がないと判断しにくい場合もあります。

 有名な事件としては、「割りばし」を咥えて走っていて転んで、「喉に刺さってしまい」、救急病院を受診した症例です。喉の傷は極僅かであったため発見が遅れてしまい、あとから「木片(割りばし)」が喉の奥の脊椎神経まで入っていたことが判明したという事故がありました。

 頭蓋骨は通常は、厚みがあり少しぶつけたくらいでは、頭部表面から割り箸などが脳神経・脊椎まで達することはありません。一方で、喉の奥や眼窩の上方奥では、骨に薄い部分があり細い木片などが突き刺さると、奥の神経組織まで達してしまう場合があるのです。

 また、スキー場などでスピードを出してゲレンデ外に、突っ込んでしまうと木の枝が眼瞼皮膚にささってしまい、眼窩の奥に木片が入ってしまうケースもあります。木片が内側や下方であれば「副鼻腔」があるから大丈夫なのですが、眼窩上方奥に刺さってしまうと、眼窩上壁を木片が突き破り脳組織まで達してしまうことがあります。

 

皮下膿瘍・異物肉芽腫形成

トゲは放置しても大丈夫なのでしょうか?ささったままだとどうなるのでしょうか・・

 トゲの種類が「金属、ガラス、鉛筆の芯、ナイロン糸」など無機質な成分ですと、そのまま埋まったままとなることがあります。小学生のときに刺した鉛筆の芯がそのまま手の平奥に入ったまま、手術で使った縫合糸(ナイロン糸)がそのまま皮下に埋まっている、手術で使った簡易縫合用のステープラ(金属)が皮下に埋まったままになるなど、問題を起こさないこともあります。

 これらの物質は、生体と化学反応を起こすことはなしに「皮下に存在し続ける」と、線維性の被膜が形成されて被包化されてしまうのです。美容で使用する鼻を高くするシリコンや、歯科で使うインプラント金属も同じ原理で、感染などを起こさないように注意すれば、特に日常生活に問題はおこしません。

 

足の裏の棘をほっとくと・指に埋まっているトゲをそのままにしていると・・・

 一方で、木のトゲ・木片などの有機物では話が異なります。病院を受診して抗菌剤内服や消毒などで処置をしておくと一時期は炎症が治まるようにもみえますが、そのまま棘を放置しておくと、細菌感染を起こして膿んだりします。すると、皮下に膿が貯まってきて患部が腫れたり、黄色い膿が排出されるようになります。 

 深い部分の木片異物を残したままにすると、感染を起こさずに済んだ場合にも長期的には「皮下で異物反応」が起こり、そのまま異物肉芽腫となってしまうこともあります。皮下に入った棘が「異物肉芽腫」を形成すると、元のトゲよりも一回り大きな「境界のはっきりしない硬めのしこり」を触れるようになります。異物肉芽腫を形成してしまった場合には、最終的には総合病院の形成外科にて外科的な処置が必要となります。

 その他、皮膚科外来で取れない深い棘のケースでも、大きな病院の皮膚外科または形成外科の対応となります。

 

トゲを抜くために良く行われる自宅治療

 トゲの根元が少しでも「皮膚の外側」に出ていれば、ご自身でトゲをとっても良いかもしれません。

 一般的に使われる道具としては、

  • とげ抜きピンセット
  • 爪切り
  • 消毒した針
  • 5円玉

などがよく使われるようです。

 とげ抜きや爪切りの角でうまくトゲが掴めれば、取れる可能性がありますが、問題はトゲの根元が皮膚ぎりぎりにある場合です。なんらかの方法でトゲを少しだけ表に押し出すことが出来れば、消毒した針の先などに引っかけて、何とか取れるようになるかもしれません。

 とくに、5円玉を使う方法は警視庁が推奨しており、試してもよいかもしれません。異物が皮下に達する場合には、異物の周りに圧を掛けると、皮下組織の内圧があがることによって、皮下異物がやや飛び出してくることがあります。異物の先端が皮膚表面にみえたところをうまく掴めれば、異物が除去出来るという方法です。

 

とげ抜きは何科にいくべきか?

 その他では、ハチミツやお湯で皮膚をふやかせて「棘」を浮かせようとするもの、浮いた棘を「テープや接着剤」で絡め取ろうという方法もあるようです。あまり、ご自身でいじりすぎてしまうと感染を起こしたり、こじれてしまうので、皮膚の浅いレベルに刺さっている場合には「皮膚科へ」、完全に皮膚の下に深く入ってしまった場合・眼窩など特殊なケースは「形成外科」に早めに受診するとよいでしょう。

皮膚科でのとげ抜きの料金・保険請求は?

 とげ抜きでクリニックを受診した際に、掛かる料金は「トゲの状態」にも寄りますが、

  • 通常のピンセットで取れる簡単な処置⇒創傷処理 200円程度
  • トゲの周りのめくれ挙がった角質を削る⇒鶏眼・胼胝処置相当 500円程度
  • 皮膚の表面を切ってトゲを取り出した⇒皮膚切開相当 2000円程度~(大きさによる)
  • 手や足の筋肉に及ぶ深いトゲ⇒手掌、足底異物摘出術 9500円
  • 筋肉内の異物を取った⇒筋肉内異物摘出術 10000円程度

 などの自己負担額(3割負担の場合・初診料等除く)が掛かる可能性があります。

 通常、皮膚科外来でおこなう「トゲ抜き」の処置は、排膿がみられたり、皮膚に切り込んだりした場合には、合計で3000円程度掛かることが多くなります。形成外科などを受診して深いトゲを局所麻酔下に摘出した場合には、下半分の「異物摘出術」として算定されることが多くなり、状態にも寄りますが、10000円以上の費用が必要になる場合もあります。

 なお、処置後には、患部の化膿を防ぐため、①抗菌剤内服、②消毒、抗生剤外用剤が処方される場合があります。

 

まとめ

 とげ抜きはご自宅で簡単に対処出来るものや、皮膚の極浅層にある小さなものでは様子をみる手もあります。一方で、化膿して痛みが出たり、なかなか取れないトゲを放置しておくと自然には治りません。あとから、しこりになったりして、返って長引いてしまうこともあります。

 ご自身で取れずに、困った場合には早めに医療機関を受診しましょう。

 昔ニュースになりましたが、木片や割り箸などを小さなお子さんが持って走るのは大変危ないです。口にくわえて、もしも奥の咽頭部(のどの奥)に深くささると危険です。眼の周囲に大きなトゲが刺さると、方向によっては脳組織があります。早めに、形成外科もしくは救急病院を受診して、どのようにして受傷したかをしっかり担当医に伝えるようにしましょう。

 

  • この記事を書いた人
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医師;大木更一郎

平成元年日本医科大学を卒業し、皮膚科学教室形成外科斑に入局。平成16年より先代院長と伴に皮膚診療を行う。平成27年大学退職後、医院を継承。(※日本医大形成外科兼任講師・形成外科専門医・救急専門医・熱傷専門医・日本皮膚科学会会員)

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