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ナローバンドUVB|大田区大森の大木皮膚科

円形脱毛症|大田区大森の大木皮膚科【紫外線療法・ナローバンドUVBの効果】

円形脱毛症の紫外線療法|ナローバンドUVB/エキシマライトの効果

 円形脱毛症では、成長期の毛根部が「障害性Tリンパ球」により破壊されることで慢性・難治性の脱毛斑を呈します。毛包由来の自己抗原による自己免疫疾患であるとされます。軽症例では自然治癒もある一方、難治性となった例では、寛解と憎悪を繰り返し慢性の経過をたどります。

 治療には、①ステロイド外用剤(主として乳液タイプ)、②フロジン液、③セファランチン・グリチロン内服が初期病変に用いられます。さらに治療効果がでにくい場合には「ステロイド外用剤を塗布後に密封療法を行う」、「抗ヒスタミン剤内服」、「血行を促進するビタミン内服」、「ストレスを緩和する漢方薬」などが追加されることもあります。

 単発型から円形脱毛症が拡大したり、数が増えて多発型などに移行してしまった場合には、①紫外線療法(ナローバンドUVB・エキシマライト)、②液体窒素による冷却療法、③ステロイド局所注射が適応となってきます。

 

円形脱毛症の紫外線治療の効果と凍結療法・ステロイド注射について

 紫外線療法・液体窒素凍結療法・ステロイド局所注射の特徴を下記に述べます。

紫外線療法(ナローバンドUVB、エキシマライト)とは?

 紫外線療法、とくにナローバンドUVBの効果には、「炎症性のリンパ球を抑制し、制御性リンパ球を増加させる」という作用機序があり、実際の臨床現場においては円形脱毛症に対して広く行われている治療法となります。ガイドラインでも、大きな有害事象もなく、安全性と利便性が高いことを考慮し「すべての病型の円形脱毛症に対してエキシマライトおよびナローバンドUVB療法を行っても良い」との記載があります。

 一件の非ランダム化比較試験、4件の症例集積研究により脱毛範囲が縮小する効果がおもに限局型円形脱毛症で確認され、汎発型でも効果が認められたという報告もあります。

 元々は、紫外線療法は円形脱毛症には保険適応がなかったのですが、「紫外線療法の効果」につき肯定的な報告が追加されてきたことより、2020年4月より正式に中波紫外線療法であるナローバンドUVBおよびエキシマライト」が保険適応となりました。つまり、「円形脱毛症に対する紫外線療法が有効である」と国が正式に効果を認めたということになります。

 

紫外線療法の費用・治療期間

 円形脱毛症に対して紫外線療法の効果を上げていくには週1~2回程度の照射療法が必要とされ、費用面では1回の治療につき自己負担額1020円(中波紫外線療法:3割負担の場合)が掛かります。

 軽度の円形脱毛症で、治療効果がでるまでに15~20回程度の照射が必要ですので、治療期間週2回通院で2ヶ月程度週1回通院ですと4,5ヶ月となります。広範囲の円形脱毛症になりますと、30~40回程度の照射を行う場合もありますので、治療は根気よく行っていく必要が生じます。

 

液体窒素による冷却療法

 液体窒素を円形脱毛症の脱毛部にあてて、軽めの凍傷を作る治療です。毛根部に集まったリンパ球(傷害性T細胞)が人工的な凍傷を起こした表皮部分に分散するために、毛包部における炎症を鎮静化して発毛を促します。ガイドラインでは、単発型および多発型の円形脱毛症に併用療法の1つとして推奨されています。近年の症例集積研究に於いても約6割程度の患者さんに効果が認められたと報告されています。

 一般外来においては、若干痛みはでるものの簡便で副作用も少ない治療のため、脱毛部分がひろがったりしてきた場合に、外用・内服治療に加えて行われることが多くなります。繰り返し治療を行う場合には、水疱や瘢痕を生じない程度の冷却を2週に1回程度行っていきます。

 

当院からのコメント

 液体窒素凍結療法は単に冷やしただけでは効果がありません。脱毛部分の表皮に軽い凍傷をつくり2週間程度で薄皮が剥ける程度を目標にしています。しっかり炎症を皮膚表面に起こさせることによって毛根部に集まっている障害性リンパ球を分散させる効果が期待できます。当院では、他疾患でも豊富な液体窒素凍結療法の経験があり、円形脱毛症に対する凍結治療にも生かされております。

 

ステロイド局所注射療法

 単発~多発型の円形脱毛症にガイドラインでも推奨されており、プラセボに比べて発毛改善への有効性は高いのですが、①注射療法のため痛みを伴うこと、②注射を打った部位に皮膚萎縮や陥凹起こす副作用があること、③ステロイドホルモン剤の注射のため月1回に制限されること、④脱毛斑が広範囲となった場合に注射できる量に制限があること、などが問題となります。

 痛みが強く出るためお子さんには適用しにくく、実際には、上記の液体窒素療法や紫外線療法を行っても改善しない場合に行われることが多くなります。また、手間が掛かるため実際に対応している医療機関は少なめとなっております。

当院からのコメント

 ステロイド注射については、当院では「ケロイドや肥厚性瘢痕、嚢腫性にきびに対するケナコルト注射療法」等での豊富な実績があります。円形脱毛症においてステロイド注射の効果を出していくには、少ない注射量でかつ、なるべく毛包部分に近くにステロイド注射薬を満遍なく入れていかなくてはなりません。

 

紫外線療法と併用療法との関係は?

 実際には、円形脱毛症の脱毛斑の範囲・大きさ・通院のご負担などを考慮して、紫外線療法・凍結療法・ステロイド注射を組み合わせていくこととなります。多発型の円形脱毛症では、紫外線療法を中心とした治療を行い、液体窒素凍結療法やステロイド注射を補助的に行っていきます。

 紫外線療法週2回までの治療を行うことができますが、凍結療法月2回程度までの施行となります。ステロイド注射はある程度の効果が期待できるのですが、1回に注射できる範囲が狭く、月1回の施行のみしかできません。

 

紫外線療法(ナローバンドUVB・エキシマライト)の効果

 円形脱毛症は、広範囲・多発化してしまうと難治となり、一般的な外用療法・内服療法のみでは改善がむつかしくなってしまうことが問題です。2000年代前半までは、円形脱毛症に対してもPUVA療法が行われていました。しかしながら改善後の再発率も高く、ガイドラインでは全頭型・汎発型の併用療法の一つとして行ってもよいとされてきました。

 一方で2000年代後半以降になると、新しい紫外線療法である「エキシマライトおよびナローバンドUVB」円形脱毛症に効果的であることが徐々に報告されてきました。下記にそれぞれの報告での照射回数・期間などをまとめていきます。

国内報告における円形脱毛症に対する紫外線療法の効果
  • 2004年榎並ら

     22才男、広範囲の円形脱毛症にナローバンド UVB療法を適用。効果をみるために左半部のみ15回照射後うぶ毛・硬毛が著明みられた。有効性が認められたため,頭部全体への照射を開始した。

  • 2009年原ら

     多発型円形脱毛症10例(最年少5歳男児を含む)にエキシマライトを週1回照射。5~30回照射を行い50%以上の発毛が7例、無効が1名。左右を比較すると照射を行った部位のみに発毛があった。

  • 2010年横川ら

     エキシマライト療法を行った円形脱毛症で、5例中3例で発毛するが、全頭型1例で全く発毛なし急速進行期での脱毛抑制効果、発毛効果とも乏しかった

  • 2010年大月ら

     308nmエキシマランプを通常の治療に抵抗性の3名孤立性円形脱毛症治療に適用。2週に1回照射、10回治療後に3名ともに発毛効果あり副作用は紅斑のみ。

  • 2010年金子・森田ら

     円形脱毛症30例(男13例、女17例)にナローバンドUVB療法を適用。週1回照射し、発毛面積50%以上を有効とした。有効率は全体で36%、脱毛面積が75%以上の重症例で約30%。紅斑反応などの副作用なし。妊婦にも照射可能でナローバンドUVBは安全であると言及している。

  • 2012年高橋ら

     ターゲット型エキシマランプ「VTRAC」を円形脱毛症に使用。単発性6例,多発性3例,汎発性4例の計13例に,週1~2回照射治療効果は、単発型6例中5例に脱毛面積75%以上の範囲に毛髪新生。3例は半年以内に治癒。従来の治療に抵抗性を示す例でも,3~8回の照射で早期に効果あり。多発性3例中1例は4ヵ月後治癒。汎発性4例で2例に産毛の新生あるも著効せず。ターゲット型エキシマランプは単発性円形脱毛症に特に有用。

  • 2104年 和田ら

     14才女児。局所免疫療法が無効な蛇行状円形脱毛症にエキシマライトを開始した。150mJ/cm2で照射開始し、1ヵ月後から発毛。照射3ヵ月後で75%以上発毛小児の円形脱毛症に対してもエキシマライト療法が有効。

  • 2016年森上ら

     ステロイド外用、局所免疫療法が無効の汎発型円形脱毛症にエキシマライトを使用。週1,2回で8回照射後に発毛し、57回照射時、頭皮全体80%に毛髪再生。照射をしていない眉の発毛もみとめた。併用薬として柴胡加竜骨牡蛎湯を用いた。副作用は軽微な紅斑、色素沈着、灼熱感で安全かつ有効な治療選択肢である。

紫外線療法の効果をまとめると・・・
  1. 広範囲円形脱毛症に左右比較試験を行ったところ、ナローバンドUVB照射を行った側に有意に発毛がみられた(症例報告)。
  2. 30例のナローバンドUVBの検討では発毛50%以上の有意に改善したものは36%重症例での有効率は30%程度であった。
  3. エキシマライトは単発型円形脱毛症での有効率が高く、週1,2回半年継続したもので半数が治癒。多発型では成績がやや悪く、汎発型では著効しなかった
  4. 他療法が無効な汎発型円形脱毛症にエキシマライトを57回照射し、80%の毛髪再生があった(症例報告)。
  5. エキシマライトが小児の蛇行型円形脱毛症に有効であった(症例報告)。
  6. ステロイド外用などの通常治療および局所免疫療法が無効であった円形脱毛症でも効果あり(症例報告)。
  7. 全脱毛型や急激な進行期での脱毛抑制効果・発毛効果は乏しい
  8. 副作用は軽度の紅斑のみで少ない。小児・妊婦にも適用しても安全である。

 円形脱毛症ガイドラインでも2010年版では「ナローバンドUVB療法の効果」はまだ評価できる状況ではないとなっていました。その後に改定された2017年版のガイドラインでは、紫外線療法の効果が評価されて「すべての病型の円形脱毛症に行ってもよい治療」に変更になりました。

 

紫外線治療の実際と期間について

 紫外線療法は当院では、MED(最小紅斑量)を測定しない簡易な方法で施行しています。ナローバンドUVBでは初回照射量0.5Jから、エキシマライトでは初回照射量100mJから開始します。治療後の赤みや紅斑・水疱形成の有無などを確認しながら徐々に照射量をあげて、ナローバンドUVBで最大照射量1.5J、エキシマライトで最大照射量1000mJとしております。

 単発型の円形脱毛症では、10~12,3回程度の照射で発毛のみられることが多く、合計20回程度の治療が必要となることが多いです。治療期間としては週2回照射を続けた場合には、10週間の治療期間が掛かることになります。

 再発を繰り返す汎発型円形脱毛症では、エキシマライトを適用した報告では70回程度照射を続けた報告があります。週2回の照射を行うと35週間で約9カ月の治療期間を要することとなります。

 治療期間については、「単発型であるのか?」、「多発型であるのか?」、「脱毛斑の範囲・大きさ」などの個々の患者さんの状態によって変わってきます。おおよそ、10~15回程度毎に患部の写真をとって治療効果がでていることを確認しながら照射を進めていく必要があります。

 

 完全に円形脱毛症固定期・完成期に入ってしまったものでは、現存するすべての治療が無効な可能性があるともされますので、治療効果がでているのかを定期的に確認しながら根気よく治療は続けていきましょう。

 

紫外線治療の副作用・問題点

 紫外線療法の副作用は、重篤なものは報告されていません。日焼け同様の軽度の紅斑・あかみ・ヒリヒリ感などがあります。まれに、過度に紫外線を当てすぎてしまうと水疱形成などを起こすことがあります。光発癌のリスクについては、現在までのところナローバンドUVBでは報告されておらず、長期的にも安全性の高い治療となります。妊娠中や授乳中でも照射が可能で、一般的に10才以上の子供には問題なく照射が可能です。

 文献報告上からも最年少は5才から紫外線療法を行った報告があり、小学生以上のお子さんであればナローバンドUVB・エキシマライトを行っても差し支えないと考えられます。

 円形脱毛症に対する紫外線療法の問題点は、「上記にまとめた文献報告」のとおり、すべての症例に100%有効な治療法ではないことです。円形脱毛症が難治化してしまうと、「確実に効果がある方法」がなかなかありません。紫外線療法中においても、一般的な外用療法・内服療法は継続を行い、かつ紫外線療法で反応が悪い難治部分には適宜、「凍結療法・ステロイド注射」などを併用していくことが望ましいと考えられます。

 一方で、紫外線療法の限界は、急激に悪化する急性進行期の円形脱毛症には対応困難なことです。急激に進行する全頭型脱毛では、「ステロイド内服パルス療法」、「局所免疫療法SADBE」などが適応となりますが、胃潰瘍の悪化・重度の接触性皮膚炎などのリスクが高い治療となるために大学病院等へのご紹介とさせていただいております。

 

まとめ・当医院の紫外線療法へのこだわり

 当院では元々、先代院長(現院長の父)の代から紫外線療法(ブロードバンドUVB)を円形脱毛症治療に用いてきました。現院長に医院を継承したあとも「父の意志を継いで」、2009年より旧紫外線装置を「ナローバンドUVB」に変更し、2014年にはターゲット型照射「エキシマライト」を導入して円形脱毛症治療に当たっております。

 ナローバンドUVBをはじめとする紫外線療法のメリットは、「通院にやや時間が掛かるものの」照射時に有効性を示すだけでなく、照射を終えたあとにも「過剰な免疫を抑制する効果」がしばらく持続することにあります。

 当院では円形脱毛症に対する紫外線治療での長い治療実績と経験があります。一般的なステロイド外用等の治療のみで円形脱毛症が改善せずにお困りの方は、ぜひ当院までご相談ください。

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医師;大木更一郎

平成元年日本医科大学を卒業し、皮膚科学教室形成外科斑に入局。平成16年より先代院長と伴に皮膚診療を行う。平成27年大学退職後、医院を継承。(※日本医大形成外科兼任講師・形成外科専門医・救急専門医・熱傷専門医・日本皮膚科学会会員)

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